大学生活で学生気分は
もったいない

堀 則男 教授
HORI Norio

計測・実験・解析で地震を抑える設計が見えてくる

地震は建物に対して最も破壊的な力を及ぼすものであり,「地震,雷,火事,親父」というように,昔から恐ろしいものの筆頭に挙げられてきました。地震の被害を受けない建物はどうやったら作れるのでしょうか。ガタガタ,ユラユラ,ガツン・・・地震によって,建物によって,揺れ方はさまざまです。地震の揺れ方と破壊力の関係,建物の揺れ方と壊れ方の関係を調べることによって,揺れ方に応じた,壊れないための,そして揺れを抑えるための設計が見えてきます。地震で建物が倒壊しないこと,人が死なないことはもちろんですが,高度に文明が発達してきた現代社会では,家具が転倒しないこと,設備機器が破損しないこと,電気・ガス・水道などのライフラインが断たれないことなども重要になってきました。そのため,地震の特性を把握し,建物の揺れを予測し,揺れのエネルギーを吸収する装置(ダンパー)を設置する方法などについて,計測,実験,解析を通して研究しています。地震を抑えこむことはできませんが,地震被害を抑えること,つまり,地震後も普通の生活を続けられるようにすることが研究の目標です。

堀先生は、東北大学から東北工大に移られたわけですが、東北大学にいらっしゃるときに感じた東北工大のイメージみたいなものってありますか。

「四年間非常勤講師で来ていたのですが、まず印象に残ったのは学生が多いということですかね。それと東北大と大きく違うと思ったのは大学院に進む人が少ないってことかな。それは周りの雰囲気とかもあると思うけど」

先生の専門分野としてはなにについて研究をなさっているのですか。

「広くいうと構造で、その中では耐震として、地震に対して安全な建物をつくるというような感じなのです。今は特に免震、制振の方面です。地震に対して安全な建物をつくるということについて、技術的、法規的には大部進んでいて、地震が起きても倒壊しない、被害者がでない建物というものはほぼできるようになってきましたが、今後の課題としては主にまだ2つの問題点があると思っています。
ひとつは、以前の古い法律に従って建てられた建物の問題です。これらの建物は今の考え方では耐震性が低く、地震で壊れる危険性の高いものも多いのですが、だからといって強制的に建て直せとは言えないわけです。そういう既存不適格と呼ばれる建物を安全に、建替えでなく安く補強するにはどうしたらいいか、ということです。
東北は地震が多いのであまり危ない建物は多くは無いのですが、極端な例は神戸の地震ですね。1600年頃には近畿地方や中部地方で大地震があったのですが、その後400年間は比較的平穏で、その次に大地震が起きたのが1995年だったわけです。古い建物も多くあったのですが、地震が長い間こないことに油断してしまったという面があります。
もうひとつのテーマが、倒れなければいいというものでなく地震が起きても設備や物が壊れない、財産価値が失われないということです。大地震が起きたけど家は倒れなかったし、みんなも無事に生きているから良かった、だけでは済まされなくなってきました。今の生活レベルから言えば、電気、ガス、水道、電話などのライフラインが使えなくなったら復旧するまでその家には住めませんし、たとえ倒れていなくても、損傷した住宅を補修するのには大きな費用がかかります。オフィスビルなどでも、データの保存されているコンピュータが破損したり、休業状態が長く続いたりすれば大きな打撃となります。そういう被害を無くせるような対策を打ち出す、というのがもうひとつのテーマですね。たとえば免震構造については、神戸の地震後に急速に普及してきました」

先生が免震、制振に興味をもったのはどうしてですか。

「最初は主に鉄筋コンクリート建物の地震応答について研究をやっていたました。その後1995年の神戸の地震があって,免震構造や制振構造が大きく着目されてきました。それから,普通の建物は法律で規定されている要件を満たして設計してあればそれでいいのだけれど、超高層や免震建物などは一棟一棟ごとに審査を受けなければならなくて、私のついていた先生がその審査をされている方だったということもあって興味を持ったという感じですね」

次に先生の個人の魅力についてお聞きしたいと思います。先生の人生のターニングポイントはなんですか。

「やはりこの大学に移ってきたことですかね。大学に入ってからずっと同じ大学にいたので,なんとなくいたところもあります。大学院に進学するときも、就職するときも、一大決心をしてというほどのことでもなかったので、工大に移ってきたことは新社会人になったような気持ちです」

この研究分野においてここが楽しいと思うものはありますか。

「実験をやって、学生がいて、作業をやって結果が出てそれをまた検討してみんなで打ち上げをやる。そういったことに達成感を感じますね。東北大は4年生から研究室配属で、先生に『4年生は月に1回コンパを企画しなさい』なんて言われたりしていましたね。打ち上げをやったり、みんなで餃子を作ったり。もちろん研究はしっかりやらなければならないのですがそれ以外のこともあるんですね。まぁそんなことばっかり覚えていたりするんだよね」

先生が講義をするときに生徒に対してこれだけは伝えたいとか心掛けていることってありますか。

「そうですね、まずは生徒の反応ですね。私の構造の分野だと結構演習的なものもやるし計算ももちろんあるので,そういうもののやり方に慣れるというのが大事だと思います。演習問題をやって、できるだけ授業中見て回って理解しているか反応を見ていくような講義スタイルにしたいと思っています」

大学の先生が生徒の反応を見て講義するっていうのは珍しい気がしますね。

「最後のテストだけ頑張ってくれればというよりは,毎回少しずつ頑張ってくれてテストは気楽に受けてくれれば良いよっていうようなスタイルのほうが良いと思っています。つまり、知識を詰め込むよりは、後で見ても分かるようにノートやメモを整理しておくことが大事だと思います」

先生の趣味はありますか。

「家では文庫本をよく読んだり、ギターを触ったりしていますね。中学のときにもらって少し弾いてみたけど難しくて諦め、またしばらくしてやってみてまた諦めて,そんなことを繰り返してくうちに大学の4年頃には弾けるようになりましたね」

最後に先生が今学生に求めていたりすることはありますか。

「やっぱり大学という場を大いに利用してほしいですね。せっかく大学に来ていろんな知識や技術を学んでいるのだから、そういうチャンスを活かしてほしいですね。これは受け売りなんですが,大学生は学生でなくてプロの卵なんです。だから学生気分でいたらもったいないぞっていうことですね。
大学では基礎知識を学ぶけど,社会に出たらそこで学ぶことのほうが当然多くなってきます。そのときに,いったい何を調べてどういうまとめ方をしなければいけないかなどはゼミであったり論文を書いてく上で勉強していってほしいです。結局は勉強の仕方を勉強してくださいということですね」

インタビューを始めるまで構造系の先生ということだけお聞きしていたので多少気構えしていたのですが、堀先生は知識の浅い僕たちにも理解できるように、視覚的に教えてくださいました。
構造のイメージは人とのつながりは比較的薄いと思っていましたが、耐震、免震における研究が、人の生活と直接関わりをもつことを知る良いきっかけとなりました。
そして、東北工大は3年の後期から研究室に配属になりますが、先生から実際に学生時代から研究室でやってきたことを聞くことができたことは2年の自分にとっては、これから研究室を選択するうえでとても参考になりました。


インタビュー:斉藤 駿